
近年の音楽シーンで注目を集めている「エレクトロスウィング」をご存知でしょうか?懐かしいジャズやスウィングの要素と、現代的なエレクトロニックダンスミュージック(EDM)が見事に融合したこのジャンルは、聴く人を自然と踊り出したくさせる不思議な魅力に満ちています。この記事では、エレクトロスウィングの定義、そのユニークな特徴、ジャンルの成り立ちと歴史、そして今すぐ聴きたくなるおすすめのアーティストまで、幅広くご紹介します!
エレクトロスウィングとは?その定義と音楽的特徴
エレクトロスウィングは、その名の通り「エレクトロニック」と「スウィング」という二つの異なる音楽スタイルを組み合わせたハイブリッドな音楽ジャンルです。別名「スウィングハウス」とも呼ばれ、20世紀初頭のヴィンテージスウィング、ジャズ、ビッグバンドのサウンドに、モダンなエレクトロニックビート、ハウス、ヒップホップ、そしてEDMの要素を融合させています。

このジャンルは、以下のような音楽的特徴を持っています。
•スウィングサンプル:
昔のジャズやスウィングのレコーディングから、特にホーンセクション、ピアノのリフ、ヴィンテージボーカルなどがサンプリングされます。
•モダンなビート: ハウス、ドラムンベース、ブレイクビート、さらにはトラップといった現代のダンスミュージックのリズムが加えられ、ダンスフロア向けのエネルギーを生み出します。
•シンコペーションとリズム:
スウィングのルーツに忠実で、独特の跳ねるようなシンコペーションとリズム感が強調されます。裏拍にアクセントを置いたフレーズが多用されるのが特徴です。
•楽器編成:
電子的に制作される楽曲が多い一方で、サックス、トランペット、クラリネットといったライブ楽器がスタジオ録音やライブパフォーマンスでしばしば取り入れられます。
•ボーカル:
ヴィンテージのボーカルサンプルが使われることもあれば、レトロなスタイルを採用した新しいボーカリストがフィーチャーされることもあります。
この「古き良き」と「新しさ」の組み合わせは、多様な聴衆にアピールする豊かで多層的なサウンドを生み出しています。エレクトロスウィングは単なる音楽ジャンルに留まらず、ヴィンテージファッションやダンススタイルとも深く結びついており、フラッパードレスやサスペンダー、フェザー付きヘッドバンドなどを身につけ、チャールストンやリンディホップといったスウィング時代のダンスとモダンなストリートダンスを融合させたスタイルで楽しむイベントも多く開催されています。

また、エレクトロスウィングには様々なサブジャンルが存在し、アーティストやDJがジャンルの境界を探求しています。例えば、本物のスウィングサンプルとビッグバンドの楽器編成に重点を置く「クラシック・エレクトロスウィング」、より強いハウスビートを強調する「スウィングハウス」、ライブバンドがスウィング感を電子プロダクションで強化する「ネオスウィング」、ムーディーで実験的な「ダークスウィング」、そしてラップの詩やヒップホップビートとスウィングサンプルを融合させた「スウィングホップ」などがあります。
エレクトロスウィングの歴史と進化
エレクトロスウィングのルーツは、1990年代初頭に遡ります。この頃、DJやプロデューサーたちが、ジャズの要素をエレクトロニックトラックに統合する実験を始めました。初期の試みとしては、オランダのハウスグループDoopのシングル(1994年)「Doop」や、イギリスのDJ Mr. Scruffの「Get a Move On!」(1999年)などがあり、これらは主に「ニュージャズ」のサブジャンルの一部と見なされていました。しかし、この初期のエレクトロスウィングの原型は1990年代末には一旦消えていきます。
ジャンルが本格的に人気を獲得し始めるのは、2000年代に入ってからです。
特にヨーロッパ、中でもフランス、ドイツ、オーストリア、イギリスなどで大きな人気を博しました。
ジャンルの確立と牽引者
Parov Stelar
Parov Stelar(パロヴ・ステラー) は、エレクトロスウィングのゴッドファーザーと広く認識されており、2000年代初頭からスウィングサンプルとエレクトロニックミュージックを融合させた楽曲制作を開始しました。彼の楽曲「Catgroove」や「Booty Swing」はジャンルのスタイルを象徴する存在となり、特に「Booty Swing」はアメリカのメインストリームにもエレクトロスウィングを広めるきっかけとなりました。
Caravan Palace
フランスのバンド、Caravan Palace(キャラバン・パレス) も同時期に、ジャズ、スウィング、エレクトロニックミュージックを融合させた独自のスタイルを発展させ、そのエネルギッシュなライブパフォーマンスで国際的な人気に貢献しました。彼らのデビューアルバムは2008年にリリースされました。
世界的なブレイク
2010年には、オーストラリアのEDMデュオ、Yolanda Be Cool & DCup(ヨランダ・ビー・クール&Dカップ) によるシングル「We No Speak Americano」が世界中で大ヒットし、エレクトロスウィングの人気を爆発させました。この曲はイギリスとオーストラリアでチャート1位を獲得し、アメリカのビルボードのメインストリームトップ40にもランクインする快挙を達成しています。
デジタルプラットフォームやソーシャルメディアの台頭も、エレクトロスウィングの世界的な普及に不可欠な役割を果たしました。YouTube、SoundCloud、Spotifyなどのオンラインプラットフォームを通じて、アーティストは世界中の聴衆に音楽を届けられるようになり、このジャンルの成長とファンコミュニティの形成に大きく貢献しました。
また、エレクトロスウィングのシーンは「ヴィンテージリミックス」という用語でも呼ばれることがあります。これは、スウィングだけでなく、ソウル、ブルース、ファンク、ゴスペルなど、1900年から1970年頃までの「レトロ」な要素を持つあらゆる音楽をリミックスする、より広範な概念を指します。
エレクトロスウィングは、過去の音楽を現代に「復活(Resurrection)」させ、現代の文脈に「再文脈化(Recontextualisation)」し、新たな形で「リミックス(Remix)」するという、広範な文化現象の一部でもあります。これは、単に古いものを再現するのではなく、新しい意味や関連性を持たせて提示する試みであり、ジャンルの魅力の核となっています。
今すぐ聴きたい!おすすめのエレクトロスウィングアーティスト
エレクトロスウィングのシーンは、多様な才能あるアーティストによって常に活気づけられています。
ここでは、国内外のおすすめアーティストをご紹介します。
世界の主要アーティスト
•Parov Stelar
エレクトロスウィングのパイオニア。彼の楽曲は、ジャズサンプルと電子ビートの革新的な融合が特徴で、中毒性のあるリズムを生み出します。
•Caravan Palace
フランス出身のバンド。ライブパフォーマンスのエネルギーと、ジャズ、スウィング、エレクトロニックミュージックのユニークなブレンドで知られています。ファンからは「Lone Digger」や「Rock It For Me」が人気です。
•Swingrowers
イタリアのグループで、スウィング、ジャズ、ポップ要素を電子ビートと組み合わせた独特のサウンドが特徴です。彼らの楽曲「Midnight」や「Butterfly」は、心地よいメロディアスなトラックが魅力です。
•The Electric Swing Circus
イギリスを拠点とするバンド。エネルギッシュなライブショーと、スウィング、ジャズ、エレクトロニック要素を融合した革新的な録音で高い評価を得ています。代表曲に「Hit and Run」や「Golden」「Empires」があります。
•Tape Five
ラウンジ感のある、リラックスしたエレクトロスウィングスタイルが特徴です。「Bad Boy Goodman」などが有名です。
•Jamie Berry
「Lost On the Rhythm」などのヒット曲があり、硬めのキックとスウィングジャズ要素の融合が気持ちいいと評価されています。
•Wolfgang Lohr
ドイツ人プロデューサーで、ディープハウスやテックハウスなど、数多くのEDM形態で活動した後、近年はエレクトロスウィングに注力しています。彼の楽曲は複雑で非常にダンサブルだと評されています。
日本のエレクトロスウィングアーティスト
日本でもエレクトロスウィングは「あまり知られていない」ジャンルですが、熱心なファンとアーティストが存在し、国内の文化振興をサポートする「一般社団法人日本エレクトロスウィング協会(Electro Swing Japan)」も設立されています。
•Lily Mizusaki
2017年にエレクトロスウィングに出会い、クラウドファンディングで資金を集めて1stCDを自主制作したシンガーです。
現在も日本のエレクトロスウィング界を牽引するエレクトロスウィングアーティストです。
私もLily Mizusakiさんに「ステップはお静かに」という楽曲を提供させて頂いております。MVアニメーションは大人気アニメーターのたそやマロさんです。
関連記事:
Lily Mizusaki様EP「ステップはお静かに」全曲作編曲担当!! | エレクトロスウィング・ジャズ専門作編曲家mARUTA mANABUのサイト
•FAKE TYPE.
MCのトップハムハット狂とトラックメイカーのDYES IWASAKIによる音楽ユニットです。エレクトロスウィングにヒップホップ、ドラムンベース、ダブステップなど幅広いジャンルを取り入れ、キャッチーなメロディとトリッキーなラップを組み合わせた独自のスタイルで知られています。
特に、映画『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌「ウタカタララバイ」をAdoに楽曲提供し、そのセルフカバーも話題となりました。これにより、日本でのエレクトロスウィング普及に大きく貢献しています。
•DYES IWASAKI
FAKE TYPE.のトラックメイカーで、Lily Mizusakiさんをボーカルに迎えた楽曲も制作しています。
最近では、Netflixシリーズ実写ドラマ版『ONE PIECE』のサウンドトラックにも、海上レストラン「バラティエ」のシーンで流れる音楽として、エレクトロスウィングの楽曲「Party At Baratie」 が収録されており、幅広い層への浸透が期待されます。
またテレビのバラエティー番組でのBGMとして使用されることも多くなりました。
まとめ
エレクトロスウィングは、過去の魅力と現代のエネルギーを融合させた、まさに「温故知新」の音楽ジャンルです。そのユニークなサウンドとダンスフロアでの普遍的な魅力は、世代や音楽の好みを問わず、多くの人々を惹きつけています。
この記事をきっかけに、ぜひあなたもエレクトロスウィングの世界に足を踏み入れ、そのレトロでいて革新的なサウンドを体験してみてください!きっと、新しい音楽の発見と、思わず体が動き出すような楽しい体験が待っているはずです。
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